eXTREMESLAND CS:GO Asia 2019 プレイオフ Absoluteの全試合の注目ポイントと解説

eXTREMESLAND プレイオフ 注目プレイの解説

11月14日から17日の4日間にかけて中国・上海で行われた賞金総額10万ドルのアジア大会、eXTREMESLAND CS:GO Asia 2019のプレイオフが16日、17日に行われた。

優勝候補TYLOOと同グループに配置されたAbsoluteは、グループ予選でGenuine Gaming、YaLLa Esportsを破り2位通過、見事にプレイオフへ足を進めた。

プレイオフには4つの各グループの上位2チームが進出し、以下の8チームがプレイオフへの出場を決めた。

引用” eXTREMESLAND (@eXTREMESLAND) – Twitter” グループAではTYLOO、Absolute、グループBではMVP PK、AUGUST、グループCではBOOT-d[S]、Demise、グループDではViCi、Brenが勝ち抜き、プレイオフへ足を進めた。
引用”eXTREMESLAND (@eXTREMESLAND) – Twitter” グループAではTYLOO、Absolute、グループBではMVP PK、AUGUST、グループCではBOOT-d[S]、Demise、グループDではViCi、Brenが勝ち抜き、プレイオフへ足を進めた。

プレイオフ準々決勝 Absolute vs MVP PK

プレイオフ準々決勝、Absoluteは韓国No.1チームMVP PKとBO3で対戦した。MVP PKはグループ予選でkabal、dobu、erkaSt、Zilkenbergといったモンゴルのベテランプレイヤーを揃えたチームAUGUSTを破っていることに加え、昨年のeXTREMESLAND CS:GO Asia 2018では優勝を残している。日本の隣国である韓国のチームMVP PKは同じ東アジア地域で国際大会予選でも何度も対戦しているAbsoluteのライバルチーム的存在だ。

また、9月末に若手プレイヤーのRb、k1ngを迎え入れたばかりで、過去の試合を見ても100%の試合を出せているようには見えないため、Absoluteにやや優勢であるように考える。

接戦の末、勝利を掴んだAbsolute

1stマップはMVP PKピックのInferno、グループ予選の記事でも述べたように昨年以前よりInfernoはAbsoluteの苦手マップで、特に海外チームに対しては積極的にBANしているように感じていたが、昨年末にチームにJUNiORコーチが加入、実際にマッププールも以前より改善されたように思える。

1stラウンドのピストルラウンドは1人の犠牲で済みAbsoluteが取得しそのまま4ラウンドを獲得するが、5ラウンド目よりMVP PKが9ラウンドを連取、ミッドプッシュやT字に4人を配置するといった守りを見せるが、MVP PKの流れを止めることはできず、9-6でMVP PKがややラウンド差を広げ、後半ラウンドへ入った。

後半1stラウンド、Absoluteはミッドラッシュを選択、Reita選手のフラッシュバンが刺さり1人も削られる容易にAサイトを制圧、ケブラーにはダメージが入っているため、Bサイトに隠れているstaxを狩りに行くが、キルには至らなかった*。

*CSGOはヘルメットのみを購入できないため、1stラウンドでケブラーにダメージが入っており、グレネード等持っていない場合には、できるだけセーブを狩りに行った方が良い場合が多い。

後半1stラウンドを取得したAbsoluteは流れをつけ4ラウンドを連取。MVP PKは元GOSUのコンビminixeta、staxの活躍も相まって14ラウンドまで取り返すが、Absoluteが限られた資金の中ハンドガンを購入するフォースバイでAラッシュを成功、その後マップコントロールを優位に取ったAbsoluteは5ラウンドを連取し、16-14の接戦で1stマップを獲得した。

2ndマップDust2、Absoluteはピックマップを落とす

2ndマップはAbsoluteピックのDust2、実際にAbsoluteのDust2の勝率は高く、先日のOMEN Challenger Series 2019、GALLERIA GLOBAL CHALLENGE 2019のUpdraft戦においてもDust2をピックしている。

Dust2はマップ構造上、ミッドコントロールが非常に重要で、そのうえ1on1のAIM勝負になるシーンがよく見られる。AbsoluteがMVP PKに対してDust2をピックしたのは、相手の弱点を見つけているのか、それともシンプルにAIMで勝負しようとしているかは定かではないが、何かしらの秘策があるように感じられた。

1stラウンドはAbsoluteが獲得し、両チームともに2ラウンドずつ取った5ラウンド目、takej選手のエントリーからの3キルにより、僅か十数秒で敵の人数を1人に減らしラウンドを獲得した。

グループ予選よりそうだが、takej選手のエントリースキルが非常にずば抜けている。先月のGALLERIAの公式配信では、FaZe所属のNikoをリスペクトし、設定も同じにしていると答えていたが、takej選手はまだ18歳。今後数年ではNikoを超える存在になっているかもしれない。

ここから試合はシーソーゲームとなるが、11ラウンド目よりMVP PKは完全に試合の流れをつかみ、16-6と大差でMVP PKが2マップ目を獲得した。Dust2ではminixeta選手が素晴らしい活躍を見せスコアは28キル11デス、HLTV Ratingは驚異の2.11を記録している。

引用” HLTV.org ”
引用”HLTV.org - https://www.hltv.org/stats/matches/mapstatsid/95161/mvp-pk-vs-absolute”

両チームともに負けることができない最終マップMirage

最終マップはMirage。MirageはAbsoluteの得意マップであるが、それはMVP PKにとっても既知の事実。Absoluteは公式試合で多くMirageをプレイしているため、MVP PKは既に基本的な作戦については対策しているはずだ。

試合は序盤より、取って取られてのシーソーゲームが続き3-2でAbsoluteがリード、しかし、ここでもMVP PKのminixeta選手が驚異的な活躍を見せる。

Aサイト、Bサイトどこへ行くにしてもミッドコントロールが重要なMirageというマップで、Absoluteはミッドを起点とした攻めをしようと試みるが、ミッドでAWPを持つminixeta選手、そしてAサイトよりコネクターに斜線を置いているk1Ng選手の固い守りでAbsoluteはサイトの取得すら難しく、前半ラウンドは9-6で後半ラウンドへ。

後半1stラウンドはMVP PKに所得されるものの、Absoluteは続くラウンドを連取、特に10-10と接戦の中crow選手が見せたエースは、完全にチームの流れを付けた。

15-12と、あと1ラウンドでAbsolute勝利となったマッチポイントで、MVP PKはBショートの箱上にC4ドロップするといったアクシデントに。1on1の状況下で、ブーストをしなければとる事の出来ない位置にC4が落ちてしまったMVP PKはラスト1人のReita選手を追いかける鬼ごっこ状態に。

相手の位置を完全には掴んでいないReita選手はジャングルから大きく動くことはできず、ラウンド残り僅か数秒といった中で臨機応変に動いたk1Ng選手によりキルを取られMVP PKが次のラウンドに繋げた。

相手の位置を完全には掴んでいないReita選手はジャングルから大きく動くことはできず、ラウンド残り僅か数秒といった中で臨機応変に動いたk1Ng選手によりキルを取られMVP PKが次のラウンドに繋げた。

MVP PKは続く2ラウンド取得し、MVP PKがラウンドを取得すれば延長戦と試合は15-14といった瀬戸際になるがAbsolute、Reita選手が最後にAWPで決め、続く準決勝へと足を進めた。

本配信のチャンネルの試合後のインタビューでJUNiORコーチが15-12のC4ドロップの状況について「Reita選手自身はC4が箱上に落ちている事に気づいてなった。仲間の報告を受け時間を使う動きを取り、結果としてラウンドは落としたが素晴らしいコミュニケーションだったと思います。」と答えていた。その他、Absoluteは本配信のほうでステージに上がりインタビューを受けており、気になった方は是非アーカイブから確認してほしい。

また、解説のSaSRaI氏は試合中、思わず解説コメントをやめ、感情を出す場面が見られたが、そうなるのも無理はない。実際にSaSRaI氏は2016年、日本予選決勝で当時のAbsoluteを破りRascal JesterとしてeXTREMESLAND ZOWIE Asia CS:GO 2016に出場している。大会はグループ予選敗退で最下位といった結果となったがその3年後、同じ日本チームが同大会でBEST4に入ることができるのは気持ちが昂るだろう。

プレイオフ準決勝 Absolute vs ViCi Gaming

プレイオフ準決勝、Absoluteは中国強豪チームViCi Gamingと対戦した。ViCi GamingはCSGOで最も権威のある大会であるメジャー大会の出場経験もあり、TYLOOと並び紛れもなくアジアトップチームの1つだ。プレイオフ準々決勝においては、ヨーロッパを拠点に活動するトルコのチームDemiseを軽々と2-0で下しており、やはりその実力の高さがうかがえる。

特にViCi Gamingのエース的存在であるメインAWPerのKaze選手には気を付けたい。Kaze選手はマレーシアのプレイヤーながらその実力を買われ約3年間、中国のチームでプレイしている。CSGO情報サイトHLTVの全プレイヤーのRatingのランキングではZywOo、s1mple、XANTARESに次ぐ4位にランクインしており、その安定したスコアから海外もコミュニティでもTier-1チームで活躍できるポテンシャルを持つと言われている。

引用 CS:GO Player statistics database | HLTV.org - hltv.org/stats/players
引用”CS:GO Player statistics database | HLTV.org - hltv.org/stats/players”

一方、AbsoluteのJUNiORコーチも、ほぼ徹夜でViCi Gaming戦に備え過去試合のデモを見て対策していた様子をTwitterで投稿しており、ViCi Gaming戦に備える意気込みを見せている。

KazeのAWPが光る1stマップ Inferno

1stマップは、AbsoluteピックのInferno。筆者の個人的な意見だが、中国チームはInfernoを得意とする印象があり、AbsoluteがInfernoをピックすることは少し意外ではあったが準々決勝のMVP PK戦での勝利に加え、今大会ではAbsoluteはInfernoを全勝しているため、勝機は高いように感じられた。

1stラウンド、テロリスト陣営からスタートしたAbsoluteは、ラウンド序盤からバナナに圧をかけ、takej選手のエントリーキルを皮切りにそのままBサイトを制圧、既に3人が削られたViCi Gamingはリテイクを諦め、1stラウンドからケブラーをセーブする事を選択、1stラウンドは難なくAbsoluteが取得した。

2ndラウンドも同様にバナナをプッシュしたAbsoluteは、フォースバイをしているViCiの武器のキープも許さずに殲滅、C4設置・ラウンド勝利ボーナスに加え、敵の資金を削ることにも成功した。

しかし3rdラウンド、2ndラウンドと変わってAbsoluteが資金を削られることになった。ViCi Gamingは次のラウンドに備え何もアサルトライフルを購入しないエコを選択。アサルトライフルを持たないハンドガンの敵に対してはアンチエコといった動きを取ることが一般的だ。

アンチエコの敵に対しては距離を取る、もしくは人数有利を作らないことが基本だが、Absoluteは通路が狭く距離が短いアパートで2人を削られる事態に。もとより全体的に距離が短く道幅が狭いInfernoといったマップ構造上のため、アンチエコの動きを取ることは難しい。Absoluteはラウンドを獲得したものの3人を削られマネー的に辛いラウンドになった。

4ラウンド目、満を持してViCi GamingのKaze選手がAWPを購入、強気にミッドをピークすることもなく、一歩後ろに下がった配置を取る。昨年、G2のAWPer、kennyS選手がAWPの解説動画を公開していたが、動画では「AWPで重要なのはピークしすぎないこと。キルがとれてもとれなくてもすぐに後ろへ引きましょう。基本的にはリスクは冒しません。」と述べていたが、Kaze選手はまさにその動きが出来ているように感じる。ViCi Gamingは上手く斜線管理も取れており、Absoluteも設置ポイントへ攻めづらいように見えた。

続くラウンドもViCi Gamingが同じようにラウンドを取得し続け、AbsoluteのエースプレイヤーLaz選手のプレイで3ラウンドを返すも前半ラウンドは9-6でViCiがラウンド差を広げる。

後半1stラウンド、AbsoluteはAに4人、Bに1人の配置を取りAサイトを固める。Absoluteの読みは叶わずViCi GamingはBへ進むが、早くにミッドを詰めていたAbsoluteは、バナナの裏を取りエントリーキル、最後はcrow選手が1on1クラッチを決めラウンドを先取した。

しかし、続く後半2ndラウンド、AbsoluteはT字に4人を配置していたにもかかわらず、ViCi Gamingの高いAIM力によりAbsoluteは全滅、戦闘開始から僅か数十秒でViCiがラウンドを獲得した。

1stラウンドは落としたものの2ndラウンドを獲得したViCi Gamingにとってこのラウンドはターニングポイントとなった。その後、ViCi Gamingは6ラウンドを連取し15-8のマッチポイント。Absoluteも1ラウンドを返すが、最終ラウンドをViCi Gamingが取得し16-9で1stマップはViCi Gamingの勝利となった。特にViCi GamingのKaze選手の仕上がりは高く、31キル9デスのスコアを記録し、チームを勝利に導いた。

アジアトップの実力を見せた2ndマップ Overpass

2ndマップは、ViCi GamingピックのOverpass。カウンターテロリストからスタートしたAbsoluteはAに4人、Bに1人といった配置を取った。

基本的にOverpassの1stラウンドはBラッシュ警戒のため、Bに人数を割く配置を取るチームが多いがAbsoluteはトイレ、ロング、Aショートと前めにAを取る配置を取り、Bはリテイクに徹する配置を取った。Absoluteの配置はゆっくりとAショートと、ロングから攻めていたViCi Gamingと噛みあい、barce選手の開幕2キル、crow選手の2キルもあり1stラウンドはAbsoluteが獲得した。

Absoluteは、続く2ラウンド目も獲得し、3ラウンド目。ViCi Gamingはケブラーも購入せずハンドガンのみバイだったが、Kaze選手によるDesert Eagleでのエントリーに続き、advent選手がサイトに投げ入れた1つのフラッシュバンによりサイト内のbarce選手も削られ、Aサイトは瞬く間にViCi Gamingが制圧した。しかし、AbsoluteはLaz選手、takej選手のリテイクで4人を削り、スモークの中でC4を解除、非常に危ない場面だったラウンドを獲得した。

序盤より3ラウンドを連取し、流れは完全にAbsoluteかと思われたが、4ラウンド目を取得したViCi Gamingは、時間を使った攻めで常にAもBも両方を取れるようなポジションを取り、Absoluteはラウンドを取り返すことはできず10-5で後半ラウンドに入った。

後半ラウンドに入り、1stラウンドを獲得したViCi Gamingは流れを完全につかみラウンドを連取、Absoluteは後半ラウンドで1ラウンドも返すことができず16-5でViCi Gamingが勝利、プレイオフ決勝へと足を進めた。

本記事では目立った活躍をしていたKaze選手に焦点を当てたが、もちろんViCiはKaze選手を除きメンバー全員がハイレベルかつ経験豊富なプレイヤーだ。加えて9月には競技シーンでの経験がほぼ無いに等しい18歳のプレイヤーJamYoung選手を迎え入れ、チームの再構築を図っている。新たなラインナップとなったViCiの今後の活躍に、より一層注目が集まるだろう。

Absoluteは惜しくも準決勝敗退、しかし今後更に期待が高まる成長を見せた

惜しくも準決勝で敗退してしまったが、今のAbsoluteは昨年より大きく成長を遂げているように感じた。昨年、Absolute(当時のSCARZ Absolute)が出場したeXTREMESLAND CS:GO Asia 2018ではグループ予選敗退で全体の順位は最下位と非常に残念な結果だったが、今年は打って変わってBEST4にランクイン。

正直なところ、昨年までのAbsoluteはLaz選手のスコア次第といったところもあったが、今年よりAbsoluteのメンバー全員が高いスコアを獲得し、要所要所で活躍するシーンが見られた。特にtakej選手のエントリースキルには非常に光るものを感じ、チームの危機を何度も救った。

Absoluteの現在の目標はメジャー大会出場と以前より答えている。現在、メジャー大会に繋がるAsia Minorへの出場枠は日本のほか、モンゴル、韓国といった地域が含まれる東アジアよりは1枠のみとなっており、狭き門となっている。今大会で、Absoluteは韓国チームMVP PKに悲願の勝利を収めたことにより、より自信をつけ、今後に繋がる大会になっただろう。筆者はそう強く感じる。

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