eXTREMESLAND CS:GO Asia 2019 グループ予選 Absoluteの全試合の注目ポイントと解説

eXTREMESLAND グループ予選 注目プレイの解説

11月14日から15日、中国・上海で開催される賞金総額10万ドルのアジア大会、eXTREMESLAND CS:GO Asia 2019のグループ予選 Day1、Day2が行われた。

グループ予選はダブルイリミネーション形式で行われ、グループ4チーム中上位2チームがプレイオフへ進出する。グループ組み合わせでは、日本代表AbsoluteはグループAに配置され、TYLOO、YaLLa Esports、Genuine Gamingの4チームと同グループになった。

引用” eXTREMESLAND (@eXTREMESLAND) – Twitter” eXTREMESLAND CS:GO Asia 2019 予選グループ分け
引用” eXTREMESLAND (@eXTREMESLAND) – Twitter” eXTREMESLAND CS:GO Asia 2019 予選グループ分け

グループAは中国予選1位通過で今大会の優勝候補TYLOOが配置されているが、Absoluteの初戦は中東のチームYaLLa Esportsで、Absoluteはグループ組み合わせ、グループ試合共に非常に運が良く、TYLOOを除くYaLLa Esports、Genuine Gamingに対して勝利を勝ち取ればプレイオフ進出への出場が確定する。本記事ではグループAのAbsoluteの全試合における注目プレイ、注目シーンについて解説する。

グループAファーストマッチ Absolute vs YaLLa Esports

グループAの初戦、日本代表Absoluteは中東予選2位通過のYaLLa EsportsとBO1で対戦した。

中東のプレイヤーを中心に構成されたYaLLa Esportsは、大会前にKheops、Remindの中国行きのVISAが獲得できず出場を辞退、代わってエストニアのプレイヤーfejtZ、nyteがスタンドインすることを発表した。スタンドインの2人のうち1人のfejtZはHellRaisersでのプレイに加え、UYA、BTRG、5POWERと中国チームでの経験がありアジアシーンに精通しているプレイヤーだ。

しかし、個人的な意見では2人のヨーロッパプレイヤーの追加は大きな戦力強化にはならないと考えている。もとより、VISA問題で出場できなくなった2人のプレイヤーは過去の試合においてチームトップのスコアを記録しておりチームのエース的な存在、むしろ急なメンバー変更によるコミュニケーションエラー等のため戦力ダウン、もしくはさほど戦力に影響はないと考えている。

YaLLa Esportsの速い攻めを止められないAbsolute

マップはAbsoluteの得意マップMirage。プレイオフ進出を確実にしたいAbsoluteにとって絶対に取得したい試合となる。

陣営がAbsoluteはテロリストサイド、YaLLa Esportsはカウンターテロリストサイドでのスタートだ。

1stラウンド、2ndラウンドはYaLLa Esportsが取得するが、ここからAbsoluteは着実にラウンドを取得。カウンターテロリストサイドでのYaLLa Esportsは武器を購入しないエコラウンドは基本的にAサイト、もしくはBサイトにスタック、プッシュし、バイラウンドではきっちり武器を購入し要所を守るといったシンプルな守りを見せた。2人のスタンドインを入れているためか、複雑な作戦は無いように見られる。

Absoluteが3-2でリードしている6ラウンド目、YaLLa Esportsはピーク対策のHEグレネードを1つ入れ、fejtZ、Deadの2人でハイミッドをプッシュ。DeadはやられるもののカバーのfejtZがAIMで3人を持っていくパワーを見せ、Absoluteは落としたC4を取り返すことができず、ラウンドを落とす結果となった。

しかし、続く7ラウンド目ではAbsoluteは早めのAセットを選択し、難なくC4を設置。既に優位なポジションについていたAbsoluteに対しYaLLa EsportsはC4を解除できずAbsoluteがラウンドを取得。前半ラウンドはAbsoluteが9ラウンド勝ち越しリードを広げるが、YaLLa EsportsのfejtZ、3ARK00Zの健闘 もあり9-6で後半ラウンドへ入った。

後半のピストルラウンドではAサイトに4人、Bサイトに1人の配置で守っていたAbsoluteに対しYaLLa EsportsはBラッシュを選択。容易にBサイトを制圧しC4を設置したがAbsoluteはショートから3人、マーケットから2人で綺麗に挟み込み、見事なリテイクを決め1stラウンドを獲得した。

YaLLa Esportsはピストルラウンドを落としたものの、C4設置をしたためロスボーナスの$1900に加え、設置ボーナスの$800を獲得。fejtZ選手、3ARK00Z選手の2人にテロリストの強力武器SG 553にドロップする、いわゆるフォースバイを選択した。YaLLa Esportsはミッドの制圧に 4人をかけたのに対し、Absoluteはミッドを大きく開けていたため、YaLLa Esportsにとってパレスから1人、ミッドから4人と綺麗にAを挟める形となり、パレスからタイミングよく飛び出たfejtZ選手のエントリーにより、YaLLa Esportsはラウンドを獲得した。

フォースバイのラウンドを獲得したYaLLa Espotsにとって、このラウンドはターニングポイントになった。YaLLa Espotsは続くラウンドはBラッシュ、その次のラウンドは人数をかけミッドコントロールと常に人数をかけ動き、キルを取られてもカバーができる状態で常に動いていた。

後半ラウンド、Absoluteは2ラウンドのみの獲得で、試合の流れは常にYaLLa Esports。最終的には16-11でYaLLa Esportsが勝利した。前半ラウンドでもそうだったが、YaLLa Esportsはカバーをしっかりするといった基本的な動きに加え、早めのラッシュを多用し強気なプレイを見せた。

ラウンドを連続で取得されると、その流れを断ち切れないといったシーンが海外大会でも多く見られ、恐らくAbsoluteの後半ラウンドでも同じような状況に陥っていたと思われる。また、YaLLa Esportsは中東予選にて昨年のeXTREMESLAND CS:GO Asia 2018 準優勝チームNASRを破っており、その実力も垣間見ることができただろう。

しかし、この大会のグループ予選はダブルエリミネーション形式のためまだ終わりではない。Absoluteにとって続く敗者側マッチはプレイオフ進出のためには絶対に勝利しなければならない。

グループA 敗者側マッチ Absolute vs Genuine Gaming

グループAの敗者側マッチでAbsoluteはオーストラリアのチームGenuine Gamingと対戦、Genuine Gamingは、ESL Pro League Season 10 Oceaniaとのバッティングのため出場を辞退したGrayhound、ORDERに代わり出場している。

Genuine Gamingは国際大会での出場経験は無く、オーストラリア国内を中心に活動しているチームだが、国内大会ではGrayhound、ORDERといった国内トップチームに勝利した実績があり、オーストラリアのトップチームが出場する国内リーグESEA Season 32 Australiaでは18チーム中3位と非常に好成績を記録している。

代理出場だからとはいえ、侮れないチームだが、Genuine Gamingはメンバーの1人が病気にかかり、代わってコーチのoxeyが出場している。病状の理由のため運がいいとはあまり大きな声では言えないがAbsoluteにとってはチャンスでもあるため絶対にこの試合は獲得したい試合となった。

個人技が光る1stマップInferno

1stマップはAbsoluteピックのInferno。AbsoluteがInfernoをピックする印象はあまりないが、GALLERIA GLOBAL CHALLNEGE 2019決勝ではIgnisピックのInfernoに対して勝利しているため、苦手マップではないと思われる。

1stラウンドのピストルラウンドでは、Genuine GamingがBサイトのバナナを1人で前めで守っていること に気づいたAbsoluteは人数でバナナを押しBサイトを制圧した。

バナナを1人で前め取っていた場合、バナナを守る役目は基本的に情報収集だ。情報を取れたらサイトまで引き仲間を待つのがテンプレートだが、敵の寄りよりも早くBサイトを制圧し、有利な状況を作ることができた。リテイクで危ないシーンもあったがAbsoluteにとって比較的容易に取れたラウンドだと感じた。

2ndラウンド、3rdラウンドとラウンドを獲得し流れを掴んだAbsoluteは、緩急をつけた攻めでラウンドを次々と獲得、Laz選手の素早いフリックショット、barce選手の1on3も見られ前半ラウンドは11-4と大幅にラウンド差を広げ後半ラウンドに入った。

後半ラウンドでは、Genuine Gamingも5ラウンドを続けて獲得しリードを縮めるが、前半での大きく開いたラウンド差を埋めることはできず、Absoluteが16-9で勝利、1stマップを獲得した。

Absoluteの突破力を見せたTrain

Genuine GamingピックのTrainでは、ピストルラウンドよりGenuine Gamingがラウンドを連取し、5-0までリードを広げるがAbsoluteはここから10ラウンドを連取、特に10ラウンド目のReita選手の3キルはチームを鼓舞するプレイになったように感じる。Reita選手は設置までに時間制限いっぱいまで時間を使ってきた相手に対して裏詰めの確認をせず、約1分間同じ斜線にスコープを置いていた。オフラインといった環境で緊張も感じる中、あそこでポジションを変えず、AWPをミスすることもなく当てるプレイはチームの士気アップに繋がっただろう。

後半ラウンドでは、Genuine Gaming側の健闘もあり12-10まで追い詰めるが、Absoluteはラッシュを多用し今後に備え作戦を隠している、もしくは作戦自体がラッシュなのかは分からないがAbsoluteにしては珍しくAIMで押すといったプレイを見せ、16-11で勝利、グループ最終戦へ繋げた。

以前までのAbsoluteのイメージとしては、個々でバラバラに動き、時間切れでラウンドを落とすといった場面が度々見られたが、Genuine Gaming 戦のTrainではメンバー全員で一緒に動くといった場面が多く見られ、コミュニケーションが良く取れているように感じた。長年共にプレイしているメンバーの意思疎通が見られ、さすが国内No.1といったところだろうか。

グループ予選2位通過を決める戦い、Absolute vs YaLLa Esports

グループ予選最終試合、敗者側マッチ決勝では 再びAbsoluteとYaLLa Esportsの組み合わせで試合が行われた。

1stマップはAbsoluteピックのMirage。初戦でAbsoluteはMirageで敗北しているものの、次こそは絶対に勝てると言わんばかりに強気なMirageのピック。

1stラウンド、テロリスト側のAbsoluteはAセットを選択。コネクター、ステアにスモークを炊きミッド、ジャングルの斜線を塞ぎ、フラッシュを入れCTベースまで取るといったテンプレートな作戦だが、CTベースにいるfejtZの2キルに加え、コネクタースモークが若干ずれたことでオープン設置* が難しくなったことにより、Absoluteは足を止められ、設置は成功したもののラウンドを落とす結果となった。

*オープン設置とは、設置したC4を様々なポジションから監視することができる設置場所。通常のサイト設置と比べ、設置中に相手より撃たれるリスクが高いが設置に成功するとラウンドの勝利確率が格段に上がる。

1stラウンドに設置は成功したため、Absoluteは2ndラウンドにSG 553を3本購入するフォースバイを決行。takej選手のミッド勝負も功をなし、1stラウンドのミスを帳消しにするような動きで5人生存ラウンドを獲得した。

特にAbsoluteのテロリストサイドでは、takej選手のエントリーが光り、人数差を作ってスムーズにラウンドを獲得できていた印象だった。一方、YaLLa Esportsは回り込んでAbsoluteの裏を取る動きを多用していたが、マップを有利にコントロールしていたAbsoluteはきちんと対処し11-4で折り返しのハーフラウンドへ入った。

後半1stラウンド、YaLLa Esportsは早めのAセットを選択。一方AbsoluteはAサイトに4人を配置するAセット警戒の体制を取り、見事にマッチ。エントリーキルは取られるもののtakej選手が4人連続でヘッドショットで仕留め、設置も許さずピストルラウンドを獲得した。また、初戦のYaLLa Esports戦でもAbsoluteはAサイトに4人、Bサイトに1人の配置を取っていた。ラッシュが多い相手に対するテンプレート配置だろうか。

続く2ラウンドはYaLLa Esportsに取られるものの20ラウンド目、AbsoluteはフルエコのなかUSPで3人を仕留め、設置された後 のリテイクも人数有利の差を活かしてラウンドを獲得。そのうえSG 553を2本回収するといったまさにわらしべ長者状態。相手の武器を奪うと同時に、フルエコでラウンドを獲得し相手のメンタル をも破壊したAbsoluteは続くラウンドを連取、16-6で1stマップを取得した。

プレイオフへ繋げた2マップ目、Inferno

2マップ目はYaLLa EsportsピックのInferno。Absoluteは開幕から3ラウンドを連取され-0でリードを許すが、4ラウンド目、AbsoluteはUSPで3人を仕留め武器差があるなかラウンドを獲得。その後、順調にラウンドを重ね前半ラウンドは9-6で折り返した。

後半1stラウンド、Absoluteは早めのBラッシュを選択。相変わらず寄りの早いYaLLa Esportsは十数秒でバナナの裏まで来るがAbsoluteは人数差で押し切り、裏取りの相手を殲滅。その後Aサイトに行くと見せかけて再びBサイトに戻るフェイクを見せ、見事C4を設置、ラウンドを獲得した。

その後、YaLLa Esportsが5ラウンド連取し反撃を見せるが、既に7ラウンドの差がついていたリードを 埋めることはできず、Absoluteが16-13で勝利。TYLOOに続きグループ予選2位通過でプレイオフへ足を進めた。

Absoluteグループ予選勝ち抜け、プレイオフへ

Absoluteはグループ予選2位通過でプレイオフへ進出、グループ予選の結果は以下のトーナメント表となる。

引用“Team Absolute (@TeamAbsoluteJP) – Twitter,https://twitter.com/TeamAbsoluteJP/status/1195298062706462720”
引用“Team Absolute (@TeamAbsoluteJP) – Twitter,https://twitter.com/TeamAbsoluteJP/status/1195298062706462720”

また、各グループ予選では以下の8チームがプレイオフへ進出している。

引用” eXTREMESLAND (@eXTREMESLAND) – Twitter, https://twitter.com/eXTREMESLAND”
引用” eXTREMESLAND (@eXTREMESLAND) – Twitter, https://twitter.com/eXTREMESLAND”

別大会ではあるが、Absoluteは今月初めに行われたOMEN Challenger Series 2019においてもプレイオフに進出している。大会連続でプレイオフ進出を決めることができたのはアジアトップとして着実に成長を遂げられている証拠でもあるだろう。

Absoluteは昨年のeXTREMESLAND CS:GO Asia 2018ではグループ予選敗退で、総合順位では最下位と苦汁を飲む結果となった。今大会はグループ組み合わせにも恵まれた面はあるが、紛れもなくアジアトップの大会であるeXTREMESLANDでプレイオフに進めるといったことは非常に大きい実績だ。

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