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GALLERIA GLOBAL CHALLENGE
2020 プレイオフ レポート

8月15日、16日の2日間、前週に行われたグループステージを勝ち進んだ4チームが出場した「GALLERIA GLOBAL CHALLENGE 2020」プレイオフが行われた。

プレイオフのトーナメント形式は全試合BO3(Best of 3)のダブルエリミネーション形式と、運に左右されにくい、より実力が顕著に表れる形式となっており、日本一のチームを決めるに相応しい大会内容となっている。

前週に行われたグループステージは国内トップチームの総勢16チームが出場し、非常に激しい熱戦が展開されたが、プレイオフではそれを凌駕する熾烈な戦いが繰り広げられた。

当記事ではGrand Finals「Absolute JUPITER vs REJECT」の観戦レポートをお届けする。

Grand Finals「Absolute JUPITER vs REJECT」

Grand Finalは公認大会3連覇、そしてGGC 4連覇がかかる王者Absolute JUPITERとグループステージより高い個人技を見せつけるREJECTの試合が行われた。

Absolute JUPITERにとってCS:GOから続くGGCは何はともあれ絶対にタイトルを勝ち取りたい重要な大会、そして思い入れの強い大会である。当時CS:GOで活動していたAbsolute JUPITERのメンバーは2017年以降、CS:GO部門で年々優勝を勝ち取っており、今大会のテーマである” Road to World”の名の通り、国際大会への切符を勝ち取り、世界でも「Absolute」の名を知らしめてきた。

優勝賞金100万円も勿論のことだが、Absolute JUPITERにとって、国内大会連覇、国際大会への切符、そしてGGCでの優勝はそれと同様の価値があるように感じる。

対するREJECTは、国内のFPSシーンで”神の子”と呼ばれるDep選手率いるCounter Strikeにルーツを持つメンバーで構成されたチーム。REJECTはグループステージより、野良連合、SunSisterを打ち破りプレイオフへの出場権を勝ち取っており、プレイオフでは一度Absolute JUPITERに敗れているものの、敗者復活決勝でCYCLOPS athlete gamingを破り、リベンジマッチとなるGrand Finalへ舞い戻ってきた。

敗者復活から上がってきているREJECTは、BO3を3試合連続で行うことになるため、多少の疲れを感じていると考えられるが、敗者復活決勝で勢いづけた力をそのままGrand Finalへ引き継げるかがカギになる。

キャスト陣、視聴者によるGrand Finalの勝利予想は以下のようになっている。

Grand Final キャスト 勝利予想
Grand Final 視聴者 勝利予想

キャスト陣は満場一致でAbsolute JUPITER、視聴者予想も81.8%と8割以上のプレイヤーがAbsolute JUPITERを選択した。

これまでキャスト陣とは相反するチームを選択してきたOooDa氏も今回のGrand Finalに関してはAbsolute JUPITERを選択、キャスト陣もAbsolute JUPITERのこれまでの全試合を間近で観戦してきているため、「Absolute JUPITERの持つ連携力、一貫性」は身にしみて感じているだろう。

Grand Final 1stマップ:バインド

Grand Final、1stマップはバインド。A、Bを行き来できる2つのテレポーターが特徴的なマップであるバインドは特に駆け引きが重要である。足音の情報、アビリティが勝敗を左右する。

ピストルに定評のあるAbsolute JUPITERが制すると思われた1stラウンド、Bロングをゆっくりと攻めるAbsolute JUPITERに対しREJECTはBロングに人数を2人配置、敵を確認したREJECTのfeez選手のオーメンが綺麗に決まり、feez選手、Dhimoruto選手により3キルを連取、Absolute JUPITERはテレポーターに入りAに設置を試みるが、2vs4となった人数差を埋めることはできなかった。

1stラウンドで勢いをつけたREJECTは、2ndラウンドよりラウンドを重ね、前半ラウンドは9-3とREJECTが大きく差を広げた。

Absolute JUPITERはBを攻める動きがよく見られたが、Bにはfeez選手のオペレーターが待ち伏せており、Bから転換してAを攻めると正確なAIMを持つHaReeee選手が待ち構えていた。REJECTは個人技を見せつけるアグレッシブさも残しつつ、アビリティ、トレードキルを意識し慎重に守る形を築いていた。

REJECT HaReeee選手の2キル、フェニックスのアルティメット” ラン・イット・バック”を含めると3人を射止めた

陣営を入れ替え、アタッカーに回ったREJECTだが、ディフェンダー同様に慎重さを意識した攻めが多く見られた。サイト間を揺さぶり、人数をかけサイトを攻め入る。序盤の勢いを残したまま、REJECTが後半ラウンド序盤より有利に展開を進め12-3、1stマップ獲得まで残り1ラウンドまで迫った。

1ラウンドも落とせない状況まで追い込まれたAbsolute JUPITERだが、ここで体制を変え、Reita選手、Laz選手の2オペレーターの体制に切り替えた。この体制が功を奏し、2ラウンドを取り返した。

Laz選手のオペレーター3キル、スパイカメラを駆使し、たった1人でBサイトを守り抜いた

しかし、Absolute JUPITERは7ラウンドついた差は取り返すことはできず、REJECTが13-5で勝利、1stマップ バインドを制した。

Absolute JUPITERがピックしたバインドだったが、終始共にREJECTが展開を握り、Winner’s Finalsで敗れたバインドでリベンジを成し遂げた。そして、Absolute JUPITERにとって今大会初となる1マップを取られる結果となった。

試合終了時にはTwitterに”REJECT”といったキーワードがトレンド入りするなど、大きな注目を集めた1stマップとなった。

Grand Finals 2ndマップ:ヘイヴン

2ndマップはヘイヴン、A、B、Cの3つのサイトを持つことが特徴のヘイヴンはディフェンダー時の人数配分に気を付けなければいけない。1つのサイトに集中するか、薄くワイドに広げるかなど、3つのサイトがあることによりディフェンダー側の判断が勝敗を決めるカギになる。

1stラウンド、Absolute JUPITERはBに人数を割かずカメラのみを設置しリテイクを狙う作戦。スパイクの設置を許すことになるが、3人でウィンドウに圧をかけ1人、2人とキルを重ね、悠々とラウンドを獲得した。

ヘイヴンは特にサイファーが活躍するマップである。サイファーのスパイカメラ、トラップワイヤーはサイトが3つ存在するヘイヴンで、少人数でサイトを守る、空けたサイトに罠を設置しリテイクを狙うなどの多機能に渡る活躍を見せることができるため、場合によっては1人で何人分もの活躍が出来る。

しかし、REJECTも引けを取らない。デュエリストで先陣を切るDep選手、HaReeee選手。ラーカー、サポートなど状況によって臨機応変に対応するDhimoruto選手、Kaminari選手、feez選手の活躍により、サイト制圧、スパイク設置後も解除を許さないラウンドが続いた。

取って取られてを繰り返すシーソーゲームが続き、いつしか前半ラウンドは6-6で折り返しとなっていた。

後半ラウンドがスタートするとReita選手のエントリーが輝く。ジェットに高さ、スピードが持ち味のテイルウインド、アップドラフトの意表を突く攻撃、浮遊時もクロスヘアめがけてまっすぐに飛ぶブレードストームなどの強みを持つエージェントである。その中でも私が思う一番の強みはテイルウインドでの引きだろうか。

ジェットを使用するプレイヤーは基本的にオペレーターを操るスナイパーが多い。オペレーターで外した後もテイルウインドで引く事により、5vs5のタクティカルシューターの基礎であるトレードキルで倒されてしまう可能性を最小限に減らすことができる。

サイファー無しの構成のREJECTは、Absolute JUPITERのスピーディーな攻めを止めることはできず、リテイクも思うように刺さらない。Absolute JUPITERは5ラウンドを連取し11-6までラウンド差を広げた。

しかし、ここでREJECTのエースDep選手が流れを変える。スモークで見えないはずの敵をオペレーターで打ち抜く。通常なら人数差を利用しサイトで守るのがセオリーだが、ヴァンダルに持ち替えスモークを突き抜け、また1人とキルを重ね、後半ラウンドで最初のラウンドを勝ち取った

Laz選手のキープも許さないアグレッシブなプレイで4キルを獲得した

REJECTはここから流れを付ける。クラッチに定評のあるcrow選手のクラッチもDhimoruto選手がしっかりと抑え、21ラウンド目にはHaReeee選手のヴァンダル4キルが炸裂、試合の流れは完全にREJECTだったが、執拗にCサイトを攻め続けたAbsolute JUPITERも取り返しラウンドは12-12、延長戦オーバータイムへと突入した。

ファントム派もヴァンダル派に移行したくなるロングレンジでのヘッドショット

オーバータイム14-13の28ラウンド目、crow選手がオウルドローンでCサイトのDep選手を確認したAbsolute JUPITERは瞬く間にBサイトを制圧しラウンドを獲得。15-13でAbsolute JUPITERが2ndマップ ヘイヴンを勝ち取り、王者としての意地を見せつけた。

スコアボードを覗くと1位は28キル23デスでREJECTのHaReeee選手、VALORANTはスコアに現れない活躍もあるが、2マップ目ヘイヴンで最も活躍した選手はまさしくHaReeee選手ではないだろうか。

Grand Final 視聴者 勝利予想

Grand Finals 3rdマップ:スプリット

優勝を決める3rdマップスプリット、現在公認大会で連覇を続けているAbsolute JUPITERだが、コミュニティ大会では1度スプリットで敗北を経験している。

現環境ではディフェンダーが圧倒的有利といわれるスプリットだが、Winner’s Finalsを勝ち上がってきたAbsolute JUPITERのアドバンテージがここで活きた。

現在の競技シーンでは、マップのBAN & PICKでスプリットを選択した場合、ディフェンダースタートの権利を相手に高確率で取られることになるため、スプリットを選択するチームは少ない。そのため、Absolute JUPITERはWinner’s Finalsから勝ち上がってきたアドバンテージを利用しディフェンダースタートを選択した。

Absolute JUPITERはこれまでジェット、ソーヴァ、サイファー、ブリーチ、フェニックスとほぼ固定のエージェント構成で今大会を勝ち進んできたが、スプリットではcrow選手はレイズ、takej選手はブリーチと異なる構成を選択してきた。

重要なピストルラウンド、1stラウンドを獲得したAbsolute JUPITERはラウンドごとに更に洗練された動きを見せた。3ラウンド目より早々にLaz選手がオペレーターを持ち出し、Aサイトの斜線を完全に切る。

更には狭い通路が多いスプリットではレイズ、ブリーチ、ブリムストーンのアビリティがよく刺さる。極めつけはLaz選手、Reita選手のダブルオペレーター。REJECTも多種多様な攻めを見せるが、REJECTの攻撃はまるで通らない。

前半ラウンド、REJECTは1ラウンドも奪うことが出来ず12-0で折り返し、後半ラウンドへ移った。アタッカーに回ったAbsolute JUPITERは5人一丸でBサイトへ攻め入りスパイクを設置。スパイク設置後も1人も倒されることなく、1人、また1人とREJECTを削り、見事パーフェクト。13-0、圧巻のスコアで「GALLERIA GLOBAL CHALLENGE 2020」、優勝を勝ち取った。

今大会で初めてデュエリストをピックしたcrow選手のスコアは驚異の23キル5デス、以前Twitterで「"ビジネス"でソーヴァをやらせて頂いてます。」と投稿していたが、解放されたcrow選手のレイズはまさしく戦車そのものだった。

「GGC 2020」優勝は「Absolute JUPITER」

今年で4回目の開催となるGGC、Absolute JUPITERは2017年のCS:GOから引き続き4連覇、そしてVALORANT公認大会3連覇の偉業を成し遂げた。見事優勝を収めたAbsolute JUPITERには優勝賞金100万円、そしてアジア大会「ASIA VALORANT SHOWDOWN」への出場権が贈られた。

大会後のインタビューでは勝利の喜び、安堵感を語っていたが、Absolute JUPITERは王者としての重圧、プレッシャー、コミュニティからの期待などを背負い、日々VALORANTに取り組んでいる。GGC 2020後にJUPITERのYouTubeチャンネルより公開されたムービー「Absolute JUPITER Champion’s History」では、選手たちの持つ様々な感情が汲み取られる。ムービーでは、彼らの持つプロフェッショナルな意識が全面的に引き出されており、まだ見ていない方は是非一度視聴してほしい。

6月に行われたRAGE VALORANT JAPAN Invitationalで優勝を収めた後、チームメンバー、コーチの6人で配信を行っていた。その中で私が印象に残っている言葉としてtakej選手の「Absoluteのメンバーが引退したら俺も一緒に引退するよ」の言葉が強く記憶に残っている。もちろんジョーク色の強い発言であることは確かだが、それほどチームメンバーを信頼しきっていると身に染みて感じた。

話に戻すが、日本、韓国、中国を始めとしたチームが出場するアジア大会は既にいくつか開催されているが、どの大会にもAbsolute JUPITERは姿を見せなかった。そんなAbsolute JUPITERにとって「ASIA VALORANT SHOWDOWN」は初の国際大会になる。Absolute JUPITERの活躍は韓国、中国などのチームに確実に目を付けられているに違いない。国内では常に最先端のメタを見せるAbsolute JUPITERが海外でどこまで戦いを繰り広げるか、非常に注目が集まる。

また、今大会のプレイオフ全試合のアーカイブがTwitch、YouTube上に残されている。これらを参考にし、是非国内トップの試合を研究、もしくは参考にし、自身のプレイを高めてほしい。

今後更なる強力なプレイヤーがシーンに現れることが予測されるが、Absolute JUPITERはこれからも王者として日本シーンを牽引してくれるであろう。そして、今後確実に開催されるであろうヨーロッパ、アメリカのトップチームが集う世界大会どんな戦いを見せてくれるか、彼らの今後の動向に目が離せない。

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